「そろばん教室を開いたら、どのぐらい生徒さんが集まるだろう?」「ライフワークとして、長く続けられる仕事なのだろうか?」と思う方は多いかもしれません。
2011年、福岡県八女市に最初に教室を開いた近藤信秀先生は現在、大牟田、広川、筑後と4教室を運営しています。夫婦で教室運営に携わっており、2教室ずつ教室長の役割を分担。二人の熱心な指導が評判を呼び、生徒さんを増やし続けています。
保護者の方からは、「自分の子どもがこんなに集中する姿を見たことがなかった。とても感動しました」という言葉をいただくそうです。近藤さんは「そろばんは、学習面や技術面だけでなく、心も成長させる習い事です。できないことができるようになる喜びがあります」と話します。
今回は、そろばんの先生のやりがいと楽しさ、また夫婦で教室を運営する面白さを、近藤信秀先生(以下、近藤)と近藤由香里先生(以下、由香里)にお伺いしました。
目次
初期投資を抑えて最初の教室をオープン
沼田:そろばん教室を開こうと思ったきっかけと、いしど式との出会いについて教えてください。
近藤:自分の子どもを育てるなかでPTA活動に参加したのですが、小学校の算数において、「数字に強い」という子と「数字が弱い」という子では、将来さまざまな面で大きな差が出てきてしまうことに、先生が悩んでいるという話を聞きました。私はもともと会社を経営していたのですが、子育てを通して「教育を仕事にしたい、社会に貢献する仕事をしたい」という気持ちが大きくなり、情報を集めるようになっていったのです。そこで出会ったのが、石戸謙一会長の雑誌のインタビューでした。読んでとても共感して、早速応募し教室を見学しに行ったのです。14年ほど前のことです。
沼田:もともとそろばんの経験がおありだったとか。
近藤:子どものときにそろばんを習っていて、自分の子どもたちにも習わせたかったのですが、近くにそろばん教室がなかったのです。これも自分が教室を開校するきっかけになりました。
沼田:開校までの経緯を教えてください。
近藤:最初が八女教室で、2011年に開校しました。八女は私も妻も生まれ育った土地で、故郷の役に立ちたいという思いが強かったのです。千葉でいしど本部の説明を受けて「自分たちもぜひやりたい。絶対にできる」と考えて地元に戻ったのですが、いざ教室の場所を探すとなると、とても苦労しました。そこで知り合いの不動産業者に相談をしたら、たまたまそこがフランチャイズで塾経営をしていたこともあり、親身に話を聞いてくれて。そして「特定の曜日と時間だけ場所を使わせてもらう、レンタルスペースのような形で始めてみたらどうか」と提案してくれたのです。自分で教室を所有しなかったので、内装などの費用が発生せず、初期投資も抑えられました。ただ準備もありましたので、開校までは結局1年半はかかりました。
そろばんの先生にはどんな資格が必要?
そろばんの先生になるために、必須となる国家資格のようなものははありません。しかし当然ながら専門知識は必要になります。珠算の技術面と知識の他、さらに経験を積んで指導者としての専門性を高めていく必要があります。
沼田:指導者としてどのような準備をされましたか?
近藤:もともと私自身のそろばんの実力はあまり高くはなく、当初、指導ラインとしてはギリギリ。先生になるために全国珠算連盟の珠算教師資格初級の資格を1年目に取得しました。それから、ステップアップして、珠算教師中級を2年目に取得しています。その3年後に、先生を指導できる上級の資格を取りました。資格を取ることはもちろん大事です。加えて、いしど式には非常に充実した指導カリキュラムがありますので、学習をすればきちんと教えられるようになります。
資格はもちろんですが、生徒の能力や成績を引き上げようとする責任感、発展途上の子どもとコミュニケーションを交わすコミュニケーション能力、常に自分自身も成長しようという向上心などが必要です。子どもの発達状況や心理状況を踏まえた指導を行うには、子育ての経験が活かせるでしょう。
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「習わせたかったのに教室がなかった」チラシを見て生徒が集まった
沼田:由香里先生はもともと近藤先生の会社経営のお手伝いをされていたということですが、「そろばん教室をやろうと思うんだけど」と聞いて、どう思われましたか?
由香里:昔は“読み書きそろばん”でしたが、自分たちの世代でも、もちろん子どもたちの世代でもそろばんを習っている人は少なくて、生徒さんが集まるのかな? というのがまず心配でした。長くやっていける仕事なのだろうかという不安は、正直なところありましたね。ただ夫の話を聞くと、いしど式が普通のそろばん教室と違うと思っていて、きっと続けていけるだろうと期待しているのはひしひしと伝わってきましたので、「これは覚悟して一緒にやるしかないな」と(笑)。
沼田:由香里先生としては、最初からご自身が関わろうと思っていたのですか?
由香里:夫の方はもともと私をあてにしておらず、パートの先生を補助に雇おうと思っていたようです。ただ私としては、もし教室に関わるのであれば最初から関わりたいと考えていましたので、「採用した補助の先生と一緒に研修を受けます」と言い、3人体制で準備を始めました。
沼田:開校までにどんな課題がありましたか?
近藤:当時はまだあまりWebが盛んではなく、チラシ配布がメインでしたが、スタート時の体験会に12〜13名ぐらいが集まり、そのうち10名程度が入会されました。保護者の方が「そろばんに興味があって習わせたかったのに教室がなかった。チラシを見てすぐに電話した」というケースがほとんどでしたね。
沼田:でもそこからは、近藤先生の熱心なご指導の評判を聞きつけて、順調に生徒数が伸びていったと記憶しています。
近藤:最初の1年間は認知がまだまだでしたので、チラシを撒くなどの広告宣伝を行う必要があったのです。苦労した期間もありましたが、だんだんと口コミが広がってきました。私たちも指導に自信が出て、2年目以降は順調に生徒さんも増えてくれました。
沼田:2教室目が筑後教室ですね。
近藤:2年半経ったところで、単独教室となる筑後教室を開校できました。「そろばん教室が近くにない」と、隣町からわざわざ来る生徒さんが多くなったので、要望にお応えした形です。実績があるのでスムーズに教室を借りることができました。現在は大牟田、広川と4教室を運営しています。
子どもが楽しく話し、相談できるように心を砕く
沼田:現在は教室運営に際し、ご夫婦でどのような役割分担をされているのですか?
由香里:全体を統括するのは夫です。ただ4教室ありますので、2教室ずつ教室長の役割を分担しています。
沼田:どんな点に気をつけて教室運営をされていますか?
近藤:なんといっても、子どもたちが私たちと楽しく話したり、相談したりできるように心がけています。特に私は身長が高いので、子どもが威圧感を感じないようにしなければと思っていますし、テンションが高くなると声が大きくなりがちなので、なるべく優しく声をかけるようにしていますね。
沼田:お優しい雰囲気なのに、意外です。
近藤:あとは、保護者の皆さんとのコミュニケーションですね。些細なことですが、生徒さんのお迎えやお送りのときには必ず出入り口にいて、保護者さんとご挨拶することを心がけています。顔を見ると、何か気になることがあればお話しやすいでしょう。
沼田:声がけしやすいというのは大事ですよね。
近藤:いしど式は子どもが楽しめる仕掛けがたくさんあるのですが、なかでも素晴らしいと思うのが「妖怪カード」。子どもたちに「練習を頑張って妖怪カードを集めましょう」と言うと、最初は「ふーん、別に…」という反応なのです。でも集めるうちに楽しくなってきて、カードケースもゲットして、学習も頑張れるようになる。イベントも多く、子どもたちをやる気にさせる工夫がたくさんあるし、私たちも子どもに接していて本当に楽しいですね。また、いしど式ではオンライン指導も当たり前でオンラインのツールも豊富なのですが、他の個人塾ではまだまだ活用されていませんので、今後も武器になっていくと思います。
オンラインでそろばん練習のフォローアップ
近藤先生が実施しているオンライン練習の様子をご紹介します。
月に数回、教室の子どもたちが集まり、30分ぐらいそろばんの練習をします。大会前や試験前など、多いときは20人ぐらいが集まるそうです。この場で課題ができるようになって子どもがやる気になり、家で自主的に練習するようになることが目的の一つです。
「Zoomということもあり、必ず子どもたち一人ひとりの名前を呼ぶことを心がけています。そうすると子どもは、“ちゃんと見てもらえている”“自分を意識してもらえている”と思うもの。できてもできなくても楽しかったと思えるし、満足して終えることができます」と近藤先生は話します。
いしど式オリジナル! 妖怪カードってなに?
妖怪カードとは、そろばん学習やイベント参加で集めることができる、いしど式オリジナルのカードアイテム。カードのポイントを貯めると、特別な妖怪グッズと交換ができます。交換は夏と冬に行えます。
なお「妖怪カードコンテスト」も開催されています。妖怪カードにふさわしいと思うキャラクターを応募し、入賞すると新キャラクターとしてカードに採用されます。
そろばんは、勉学・技術だけでなく心も成長できる習い事
沼田:ご夫婦で教室運営をされる楽しさは、どんなところにありますか?
由香里:もともと、仕事においてもプライベートにおいても、嬉しいことも苦しいことも夫婦で分かち合いたいと思っています。なので、同じ経験や思いをして、いろんな会話ができること、それ自体が嬉しいですね。
沼田:それは素晴らしいですね! お二人に伺いますが、そろばんが社会に対して果たす役割は何だと思いますか?
由香里:人格が形成される時期にそろばんを習うというのは、人生にとってとても大きなことです。そろばんを通して、困難にぶつかってもそれを乗り越える力や、諦めない気持ちを身につけてほしいと思うし、そろばんを習った子どもたちならきっと難しいことも喜びに変えていけると信じています。私自身も、自分が子育てを通して学んだことを他のお子さんに還元できるのが嬉しいし、もっとお役に立てたらという気持ちでいます。
近藤:そろばんは計算能力を高めるだけでなく、スポーツに似ている面があります。試験や大会を経験することで、集中力が高まったり自分で自分を律する力がついていったりする習い事です。勉強という部分もあるのですが、スポーツのように一歩一歩、できなかったことができるようになる楽しさや喜びがありますね。保護者の方からも、「子どもが集中している姿を見て、本当に感動しました」という声をいただくことも多く、私としても嬉しい気持ちです。
沼田:そこがそろばんの面白いところですよね。夢中になって練習しているうちに、いつの間にか計算が得意になっていたという感じで。先生としてのやりがいや楽しさは、どういうところにありますか?
由香里:お子さんの変化を見られるというのは、とても嬉しいですよ。諦めがちだった生徒さんが「もっと頑張って練習してみる」と粘れるようになったり、自分で工夫できるようになったりする姿を見られるのは、先生としての喜びですね。
近藤:子どもというのはそれぞれ個性があり、成長にも差があります。そのなかで、子ども自身が輝けるような場所を作ってあげることがとても大切です。そういう場所があれば、自然に成長していくもの。そんな環境を作るのがそろばん教室の役目だし、お子さんの一番大事な時期のサポートをできるというのは、本当にやりがいです。
沼田:最後に、そろばん教室をやってみようという方にメッセージをお願いします。
由香里:そろばんそのものを上達させるというのももちろん重要ですが、お子さんの人間的な成長を支える、とても意義のある仕事だととらえてもらえたらと思います。
近藤:そろばんは学習教室と認識されていますが、実際は勉学・技術だけでなく、心も成長させられる習い事です。一見、古風な習い事と思われるかもしれませんが、いしど式の指導方式は時代の先端を行くものであり、タブレット学習の独自性などは他の追随を許しません。活用法がさらに広がっていくのが楽しみです。
沼田:本日はありがとうございました。
<まとめ>
そろばんというと計算能力を伸ばすという面がクローズアップされがちですが、実際はそれだけでなく、「できないこと」へ挑戦する心が鍛えられる習い事です。
できないことができるようになったとき、子どもは自分に対して揺るぎない自信を持ち、その自信は人生に対する前向きな力になります。そろばんの先生は、その原動力を後押しする役目を担うのです。
一人の子どもの成長に深く関わり、力強くサポートする。お子さんが好きな方にとって、これほどやりがいのある仕事はないでしょう。