働き方ガイド

2023/12/15

自分が学んだすべてが生徒の成長につながる! そろばんの先生の喜びとは?

京都府の南に位置する木津川市は、日本では珍しく人口増加が続いているベッドタウン。子育て世帯が多いことでも知られています。

 

城山台に2020年に開校した「繭塾」は、満席が続く人気校です。先生の自宅の一部が教室になっており、「現代の寺子屋」をイメージしたという外観は、非常にスタイリッシュ。内部は一転して、子どもたちの成長の舞台と言えるような温かい空間が広がります。

 

教室長の野崎真由美先生は、小学校4年生・2年生のお子さんを育てながら、ワーママとして活躍しています。子育ての経験がどのように仕事に生きるのか、そろばんが社会に果たす役割はどのようなものがあるのかを伺いました。

社会人になって役立ったそろばんの力を、子どもたちにも広めたい

沼田:野崎先生は、そろばんを幼少期から習っていて資格もお持ちです。そのほかにも、ファイナンシャル・プランニング技能士3級、日商簿記検定2級も取得して、大学卒業後は会計事務所・税理士事務所・社会保険労務士事務所に勤務されたのですね。

野崎:大学進学時に「働く人々のお役に立てる仕事は何だろう?」と考えたとき、社会保険労務士という資格を知りました。在学中は資格を取得できなかったのですが、自分が勉強してきたことを活かせるのではと会計事務所に就職したのがスタートです。主に、顧問先の経理や確定申告作成、給与計算業務に携わっていたのですが、上司の方に言われて嬉しかったのが、「今までのスタッフの中で、一番飲み込みが早い」という褒め言葉でした。これは間違いなく幼少期に習ったそろばんのおかげです。そろばんというと「計算が早くできるようになる」というイメージがあるかと思いますが、それだけではありません。大量の書類に目を通したり、整理したりするという作業も非常に早く行うことができるようになります。

沼田:情報処理能力が高いということですね。なぜそろばんの先生という仕事を選ばれたのですか?

野崎:一つ目は、「自分自身が子どもの頃に大好きだったそろばんを他のお子さんに教えたい」という気持ちが強かったこと。二つ目が、手に職をつけて世の中や人の役に立つ人間であり続けたいという思いから。そして最後は子育て支援について。将来大人になったときに日本という国を担っていける人材となる人間を育てたいという思いが強くありました。自分の子育ての経験が仕事に活かせたらこんなに素晴らしいことはないと、「そろばんの先生になりたい」という気持ちに繋がっていきました。

沼田:なぜいしど式を選ばれたのですか?

野崎:加盟校を募集しているそろばん教室をリサーチしたとき、株式会社イシドの「珠算教師資格取得制度」を知り、これだと思いました。また理念やメソッドに触れて衝撃を受け、「教室を開校するならいしど式しかない」と、その夜は興奮して眠れなかったのを覚えています。大阪で沼田社長に個別にお会いする機会をいただき、お話を聞けたのもよかったです。

沼田:私もよく覚えていますよ。いしど式の考え方にとても共感してくださいました。

野崎:実は、当時子どもがたまたまモンテッソーリ教育の幼稚園に通っていたのですが、非常にのびのびと育っているなと感じていたのですね。その後いしど式に出会い、指先を使うことや自主性を育むことを大事にしていることに触れ、自分の中で教育におけるいろいろな考えが繋がりました。また、沼田社長が元幼稚園経論で、モンテッソーリ教育に携わっていらしたことも大きかったです。

沼田:それは嬉しいですね。

 

モンテッソーリ教育とそろばんの共通点とは?

イタリアの医師・教育家のマリア・モンテッソーリ博士が考案したモンテッソーリ教育。その目的は、子どもがもともと持っている生きる力を引き出し、「自立した子どもを育てる」ことにあります。子どもの自主性を尊重し、教師はあくまで子どもを育むサポート役に徹します。

 

他にも、

・子ども自身が興味を持つ教具があり、それを自ら選べる環境がある

・教具は子どもの視覚を刺激したり、指先の運動機能の発達を促したりする機能がある

・年齢縦断的な縦割り保育のクラス編成がある

などの特徴があります。

 

いしど式のそろばん教室では、生徒は自分自身の目標を立てて練習をします。「○年生だから◯級」という決まりはありません。教室にはさまざまな年齢・レベルの生徒が集まり、互いに刺激し合いながら練習を行います。自主性とともに、社会性も磨かれる環境です。

 

またそろばんは、耳、目、指という三つの感覚を同時に処理するので、脳が刺激されます。一生使える計算力、集中力だけでなく、情報の処理能力や表現力が高まるのです。

沼田:「繭塾」の名前の意味と理念を教えてください。

野崎:「子どもたちの個性を優しい繭の衣で包み込みながら、将来に向かって自身の翼で羽ばたく力を育む舞台を作りたい」という意味を込めています。私の名前の「真由美」に、「まゆ」という言葉をかけました。「子どもたちの知性の土台を築き、教師も子どもたちの手本となる大人として自己研鑽を怠らない」というのが理念です。

①ミッション:子どもたちの生きる未来を明るく照らし続けること

②ビジョン:愛と笑顔と感謝の溢れる世界の創造

③ポリシー:逞しく、そして愛のために生きること

という3つを掲げています。

 

「子どもたちの成長の舞台」ともいえる、理想的な教室空間が実現 

沼田:開校までの経緯を聞かせてください。京都府木津川というのはどのような土地柄ですか?

野崎:京都・大阪・奈良の三都市に近く、ベッドタウンとして知られています。全国的にも珍しく人口増加が続いている市で、2022年には人口が8万人を突破しました。息子は小学校2年生ですが、なんと1学年9クラスもあるという超マンモス校。関西文化学術研究都市(けいはんな学研都市)でもあり、整備されていて住みやすい街です。私が住んでいる城山台は子育て世帯が多く、ショッピングセンターなども充実しています。一方で、子どもの数に対してそろばん教室はなぜか少なく、地域に貢献できればという思いで開校しました。

沼田:そこに、ご自宅兼そろばん教室を開校されたわけですね。本当に素敵なお家ですね。

野崎:イメージは「寺子屋」です。日本的な和の佇まいをベースに、繭の衣のようなシンプルな白い外観としました。「まっさらな心で、あなたと向き合いますよ」「承認して包み込み、共に成長しましょう」という気持ちが込められています。庭を作ったのもこだわりで、草木を見て子どもたちに豊かな心を育んでもらえるような空間を目指しました。ご近所との調和も考えて設計していただいています。

沼田:中はどんな構造になっているのですか。

野崎:玄関を開けると上が大きな吹き抜けになっていて、右が住居スペース、左が教室で、それぞれ3枚扉で仕切られています。扉を開けるといしど式の黄色い壁紙が広がり、まるで舞台のような空間の教室です。「まさに子どもの成長の舞台だな」と思いながら教えています。内部には渡り廊下があり、準備時間などにすぐに移動できて便利。2階は完全に住居スペースです。

沼田:開校まではどのぐらい準備期間があったのですか。

野崎:およそ1年半ぐらいでしょうか。結婚後は会社を辞めて子育てに専念しながらパートに出ていたのですが、そろばん教室を開校しようと決めてからは、教室の準備と同時に珠算教師資格を取得しました。また、「子どもに接する職業として、心理学の勉強は必須だろう」と考えまして、チャイルドカウンセラー、家族療法カウンセラー、メンタル心理カウンセラー、上級心理カウンセラーの資格も取っています。忙しくてあまり記憶がないぐらい大変でしたが、後悔はまったくなく、自分のすべてのエネルギーを注いだ日々でした。

沼田:いよいよ入塾説明会に漕ぎ着けたわけですが、それがちょうど2020年2月でしたか。

野崎:正式開校したのが3月で、すぐにコロナ禍が始まりました。学校や他の習い事が閉まってしまうなか、かなり迷ったのですが、「子どもたちの学びの場を閉じてはいけない」と思い、休塾はしませんでした。少人数だったからできた選択だったかと思いますが、保護者の方を中心に感謝の言葉を頂戴しました。その後は、口コミが広まったのと既存の生徒さんからのご紹介をいただいて順調に生徒数を伸ばし、今はおかげさまでほぼ満席の状態が続いています。

 

宿題やお手伝いをスムーズに始めるコツは?

いしど式の教室の壁紙は、黄色を基本としています。なぜなら、黄色は「集中の色」と呼ばれているからです。

 

黄色は網膜が焦点を合わせやすい色なので、人の注意を集めます。信号機の黄色が「注意」を表すのもこれに起因しています。生徒さんが教室に入り、準備をしていると黄色の壁が無意識に視界に入り、自然と集中力が高まります。

 

一方で、壁に貼られた葉っぱのウォールステッカーは、鎮静・落ち着き・リラックスを表す緑色です。いしど式のロゴに使われている赤色は、能率(処理能力)を高める効果があります。黄色の「集中」を基本に、リラックスと処理能力向上を繰り返す色を自然に取り入れることで、学習効果を高める狙いがあります。

 

「そろばん教室に来た」ということを視覚情報として認識させることで、子どもは学習スタートの合図を自分自身に送り、やる気のエンジンを始動させられます。

 

・実際の授業の様子

このように、やるべきことを見える状態にしておくことは、無意識レベルで心の準備につながります。

・そろばん練習の日はレッスンバッグを玄関に準備する

・練習する時間の前にはそろばんを置いておく

形を整えておくと視覚情報として意識にインプットされ、気持ちの準備もできるので、スタートがスムーズになります。宿題やお手伝いのときも同じです。

 

子どもを見守ってくれる、数少ない大人として期待を寄せられている

沼田:野崎先生は、そろばんが社会に与える役割をどう考えますか?

野崎:計算力、暗算力の向上、集中力・忍耐力・精神面の強化はもちろんのこと、保護者の方から寄せられる期待はそれ以上に大きいと感じています。私自身との時間をとても大切に思ってくださっている親御さん・生徒さんが多く、私が生徒さんにかけた言葉を覚えて励みにしてくれているようです。思えば、このように子どもと信頼関係を築いたり、見守ってくれたりする大人はそれほど多くはないですよね。また保護者の方からは、「ついつい子どもにダメ出しをしてしまう」「どんなふうに声をかけていいかわからない」という悩みも聞かれます。子育てのアドバイスが欲しい、子どもの心を育む応援団が欲しい、そんな期待が寄せられているようにも感じます。

沼田:お子さんの成長をとても間近で見守れる、こんなにやりがいのある仕事は他にないですよね。ところで、野崎先生はご著書もあるのですね。

野崎:かねてより師事している、作家の石川真理子先生が開校された「本気の文章講座」第一期生として学び、本づくりのプロジェクトとして『光に咲く蓮華のように』(『なないろの記』に掲載/編集・発行者 石川真理子)という本を書きました。長女の出産から始まり、繭塾誕生に至るまでの道のりを綴っています。テーマは「愛と感謝の物語」で、変化の時代を生きる私たちの心を強く励まし、読んだ方の心の中に勇気が湧き上がってくることを願って書いています。

沼田:今度、ぜひ読ませてください。最後に、ワーママとしてそろばんの先生をすることの魅力について教えてください。

野崎:良い意味で「垣根がなくなる」ことでしょうか。そろばんの先生というのは、自分がこれまで人生で勉強してきたこと、学んだスキル、子育てで得たこと、日々の生活の知恵などを、すべて活かせることのできる職業だと思います。また、自分がブラッシュアップすればするほど、子どもたちの成長に繋がるというのも喜びです。私にとって、まさに天職と言えます。

沼田:自分の成長、生徒さんの成長、我が子の成長と三方良しですね。ずっと続けたいですか?

野崎:体が動く限りは続けたいですね。ものすごくおばあちゃんになって先生をするのは無理があるので(笑)、いずれは後継者を育てて経営側に回ると思いますが、命が続く限り、教育者として生徒さんに接していければと思っています。

沼田:必ず叶えてください。本日はありがとうございました。

<まとめ>

生徒さんがそろばん教室に入会するのは、最初は「計算能力を高めたい」「算数に遅れないようにしたい」などが主たる目的かもしれません。

 

しかし、そろばんの先生は単に技術を教える教師ではありません。生徒さんが能力を伸ばし、精神面でも大きく成長するのを見守る伴奏者でもあります。生徒さんを励ましながら信頼関係を築き、どんなときもサポートします。生徒さんもそんな先生を信じ、時に人生の師として目標にしてくれることでしょう。保護者の方も、お子さんの成長を見守る応援団として厚い信頼を寄せてくれるはずです。

 

そのためには、常に自己研鑽を怠らない姿勢が問われます。しかし、自分が成長するほどに生徒の成長に繋がるという喜びも味わえるのです。

 

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