教育・子育て

2023/02/28

子どもが絶対に前向きになる!“魔法の言葉”をかけて子どもの自己肯定感を高める秘訣

 

決められたルールをなかなか守れない。臆病で挑戦を怖がってしまう。勉強や習い事を嫌だと言う……そんなとき、親はどのように子どもに接し、声がけをすればいいのでしょうか?

親の言葉というのは、子どもにとってものすごく大きなもの。声かけの工夫次第で、子どもの自己肯定感を満たし、充実した人生を歩む基礎を作ってあげられます。

今回は教育家の石田勝紀先生にお話を伺い、子どもの自己肯定感を高める「ポジティブワード」を教えていただきました。

親の心も前向きになるようなヒントが満載です。

 

学力以上にメンタルに課題がある子どもが多い!人生を左右する“自己肯定感”とは何か?

 

沼田:本日は教育家の石田先生にお越しいただきました。たくさんの著書があり、私自身も本当に勉強になることが多かったです。なかでも、2022年に出版された『子育て言い換え辞典』は、本当に大きな反響があったようですね。石田先生はお子さんの“自己肯定感”について多く言及されています。ただ親御さんの中には、自己肯定感という言葉にピンと来ない方がいるかもしれません。自己肯定感を詳しく説明いただきたいのと、なぜ自己肯定感が必要なのかを教えてください。

石田:私は20歳(1989年)のときに起業して学習塾を創業したのですが、子どもたちを見ているなかで、学力以上にメンタルの面に課題があるなと感じました。まだ自己肯定感という言葉が世の中になかったので、“自信がない子ども”と言い表していたのですが。自己肯定感がない子って、すぐわかります。スマホのバッテリーが少なくなるとスマホが動かなくなるように、行動力や積極性というのがないのですね。

沼田:なぜ自信がないのでしょう?

石田:観察していると、どうも勉強で潰されているらしいと感じました。周りと比べられ、評価されていくと「自分ってダメだな」と思ってしまう。ならば、勉強に自信が持てればいいということで、成績を上げさせました。そうすると、心が満たされて自信が持てるようになったのです。

沼田:なるほど。ただ自己肯定感というと、「子どもが自信過剰になり勘違いをするのでは?」と思う方もいるかもしれません。

石田:よく誤解されるのですが、自己肯定感というのは「今の自分でオッケー」と思うことです。「今の、ありのままの自分でいい」と満たされること。大人は「もっとやれ、もっと頑張れ」とばかり言いますが、それって「今のお前ではダメだ」というメッセージですよね。そうすると、「そうか、今の自分はダメなんだ」と子どもが思ってしまう。

沼田:確かに、「今の自分は受け入れられない」と感じてしまうと、自分にオッケーは出せないですよね。

石田:似たような言葉で、心理学用語に“自己効力感”というものがあります。これは、「自分ならできそうだ」と思う気持ちです。試合前のアスリートを考えると想像できますよね。「今の自分でいい」という気持ちと、「やれそうな気がする」という気持ちは違います。マイナス状態からいったんゼロに戻すのが自己肯定感、ゼロからプラスにしていくのが自己効力感だと思っています。

沼田:ただ心配なのは、自己肯定感が高すぎて調子に乗る子どもがいるのではないかということです。

石田:そこもよく誤解されるのですが、自己肯定感が高すぎるという状態はあり得ません。スマホは100%以上充電できないと思いますが、自己肯定感も同じようなもので、100%以上になることはありません。満たされているか、満たされていないかの違いですから。だからこそ心配なのは、いろいろなデータで日本の子どもは自己肯定感がとても低いという結果が出ていること。私は『カフェスタイル勉強会〜Mama Café』という勉強会を主宰していますが、そこで話を聞くと、ママさん自身が「自分は自己肯定感が低い」と言うのです。

沼田:なんとなくわかる気がします。そういうとき、親御さんはどうすべきですか?

石田:大人だから、自分で自分を満たす必要があります。元気になる本、元気になる人、テンションが上がる場所、嬉しくなる食べ物、気持ちが上がる音楽、好きな香りを用意してください。こういう感覚的なものが満たされると、脳が騙されてだんだん心も満たされます。これは特に女性に効果的です。

沼田:そもそも親御さんが、子どもの“不足”に注目しがちですよね。子どもができているところに注目したいですね。

 

親がやりがちな、指示・命令・脅迫・説得はアウト、子どもの心をよく見つめることが大切

 

沼田:親御さんの言葉って、子どもにはものすごく大きな影響をもたらしますよね。親御さんがやりがちな誤りを教えてください。

石田:4つあって、「指示」「命令」「脅迫」「説得」。これは全部アウトです。親は子どものことを、“自分よりも下の人間”だと思っていますよね。ところが子どもは親のことを“自分より上の人間”と思っていないです。同僚ぐらい。だからタメ口きくし、反抗します。ですので、子どもにはこの4つはまったく響かないです。自分の記憶を辿ってみると、かつて子どもの頃に親にこうしたことを言われたとき、受け入れたか? と考えてみてください。

沼田:なかなか受け入れられませんでしたね。これらの言葉を使わない秘訣はありますか?

石田:人は、心が動くときに行動します。心が動かないときには行動しません。心が動かないのに、指示・命令・脅迫・説得で何とかしようとするからうまくいかないのです。子どもの心をよく見つめて、どういう言葉がけ、仕組みなら子どもが動きたくなるのか、を考えなければならないですよね。

沼田:わかります。「感動」って言いますよね。

石田:あともう一つあって、自分の子どもだからうまくいかないということもあります。他人の子どもだと、上手に言えたりしませんか? 我が子だとなぜか鬼のような顔になってしまう。

沼田:子どもと自分は一心同体だと思っているのかもしれません。「きっと子どももわかってくれる」ではダメですよね。

石田:よく、子どもが「今やろうと思ったのに、お母さんに言われたからやる気なくなった!」と言うでしょう。でも親御さんも、まったく同じ体験を子どもの頃にしていますよね。親の時間感覚と子どもの時間感覚は違うから、親は待つことができないのです。『ジャネーの法則』というのですが、親が40歳で子どもが10歳の場合、親の10分は子どもの40分です。親は自分の基準で物事を考えてはいけない、ということです。

沼田:大人は子ども時代のことをすっかり忘れていますよね。

 

「おすすめの習い事は何ですか?」と聞かれたときは「あえて一つ挙げるなら、そろばんです」

 

沼田:お子さんにそろばんを習わせていたそうですね。なぜですか?

石田:私自身はそろばんの経験がないのですが、母は昔に習って級を持っています。母は計算がものすごく早くて、すごいなとずっと思っていました。そろばんは、計算能力はもちろんですが、他の能力を開花するきっかけになること、自信がつくから自己肯定感・自己効力感も満たされることを聞いていたので、「子どもには絶対にそろばんを習わせよう」と思っていました。

沼田:効果はどうでしたか?

石田:二人の子どもが始めたのは、確か小学生になってからだったと思います。効果は絶大でしたよ。学習面で言うと、数字に対する抵抗感がない。あと、因果関係はどこまであるか不明ですが、二人とも数学がめちゃくちゃ得意なのです。そろばんというのは、必ず“答え”があるものですが、答えが100%用意されているものを、いかに早くやるかというのは能力開発につながります。100マス計算もそうなのですが、難しい問題を時間かけて解くのではなく、易しい問題をすごいスピードで解くというのがいい。歴史があって現在に残っているものは、やはり理由がありますよね。

沼田:卒業生へのアンケートでも、算数・数学ではなく他の科目にも好影響があったという回答が多いです。

石田:時間制限があるような、ゲーム性・クイズ性があるような勉強というのは、学習面でものすごくプラスになります。さらに、算数は苦手な子が多いのに、自分が得意となるとすごく自信になるじゃないですか。そろばんは、絶対に裏切らない習い事だと思います。

沼田:物理的に目で見られるものを使って計算するというのは、子どもの思考にとてもいいものだと言われています。

 

こんな言い方が効果的!子どもにかけたいポジティブワード

 

沼田:それでは、そろばんを習わせている親御さんが子どもにかけるべき言葉を教えてください。そろばんは検定試験がつきものですが、「失敗したくない」と尻込みしてしまう慎重派のお子さんがいます。こういう子へのポジティブワードはありますか?

石田:検定試験というのは入学試験と違って何度も受けられるので、「3回目ぐらいで受かればいいんじゃない?」と言ってみましょう。落ちてもいい、だけど3回目で受かるにはまず1回目を受けなきゃいけないでしょうと。親の声がけとしては、深刻にとらえずに軽い感じで喋るのがポイントです。怖い顔で説得しても子どもには通用しませんし、子どもがもっと恐怖心を覚えてしまう。少し演技をしてみるといいですね。

沼田:なるほど。では、お子さんが勉強しない、そろばんの練習をしないときはどうですか?

石田:そろばんに限らず、ピアノなんかもそうですよね。じゃあそもそも、なぜ子どもは練習したくないのでしょうか。それは単純にめんどくさいから。なぜめんどくさいのか? それは、練習しても自分の成長感覚がないからです。大人はよく、「ここで勉強すればテストでいい点が取れるよ」と言うのですが、テストの結果が出るのってずいぶんと先ですよね。子どもは未来という概念がないので、未来の話をしても意味がないです。どうすればいいかというと、練習したことが“見える化”されればやる可能性がある。私がよくお勧めするのは、「子ども手帳」を一冊作り、やるべきことを書き出し、やり終えたら線を引いて、そのぶんポイントを付けてあげます。大切なのは中身ではなく、ポイントがどんどん増えるのがわかること。数字に置き換われば、子どもも成長実感を得られます。子どもがやりたがらないことを達成したらポイントをたくさんあげたりしてゲーム感覚を日常に取り入れ、「練習しないならそれでいいけど、ポイントは付かないよ」と言ってみる。子どもが夢中になる仕組みを作ってあげてください。

沼田:よくわかります。子どもの頃って、スタンプやシールが増えるととても嬉しいものですよね。実はいしど式も実践していて、子どもができるという課題の数しか与えません。一つできたら、「よくできました。じゃあ次に挑戦しようか」というシステム。成績も見える化して、ゲーム感覚で頑張れるようにしています。

石田:検定試験に受かったり、テストでいい点数を取ったりしたら、ボーナスポイントをあげるといいですよ。よく、「テストで100点とったらご褒美あるよ」と言う親がいるのですが、あまり効果はありません。なぜならそのテストって、子どもにとってものすごく遠いことだから。遠いことにモチベーションは湧きません。ボーナスポイントのほうがやる気になります。

 

自分の型にはめて子どもを従わせるのは子育てではない

 

沼田:なかには検定試験に失敗してしまう子もいます。そういうときはどう声をかければいいですか?

石田:先ほど言ったように、「3回で受かればいいや」という気持ちをまず親が持つこと。子どもってテレビゲームでゲームオーバーになっても、懲りずにまたやるでしょう? 試験も同じで、ゲームみたいなものです。試験だけでなく、日頃からゲーム性を持たせておくことをおすすめします。あと、余計な慰めもいりません。試験に落ちても、「ああそう、また次に頑張れば受かるんじゃない?」ぐらい。子どもより親が落ち込んでもいけませんよ。

沼田:親の心のハードルを下げるのって重要ですよね。ちなみに、「習い事をやめたい」と言うお子さんにはどう接すればいいですか?

石田:まず、友だちとケンカした、先生に怒られたなど一時的な理由のときは、お尻を引っ叩いて行かせてください。ただ、3週間、4週間と子どもの心が習い事から離れてしまっときは、もう続けなくてもいいと思います。子どもに「なぜやめたいの?」と聞いても、子どもは自分の内面を言語化できません。ただ一言「面白くないから」と言っても、詳しいことは説明できないのです。それなのに、親は子どもの言葉を真に受けてしまう。でも、本当はもっと別の理由があるはずです。

沼田:嫌だ、やりたくないという理由は大人でもうまく説明できないです。

石田:やめたい理由の最たるものは、先ほど言ったように、子どもが自分の成長感覚を自分でわからないこと。続けているから成長しているのに、成長度合いが緩やかだから自分ではわからない。そんなとき、たとえば過去の記録と今の記録を比べてあげましょう。子どもは他の子と比べるかもしれませんが、ウサギと亀の話をしてみるとか(笑)。

沼田:「こんなこといつまでやるの? もう嫌だ!」というお子さんもいます。

石田:そういうときは、その学年で習うべきことをすべて書き出して、終わったら赤線を引いて見える化してはどうですか。ナビゲーションマップなしに運転しても途方にくれてしまうでしょう。

沼田:お子さんをよく観察することの大切さを痛感します。ただ、反抗期というのもありますよね。口ごたえする子どもにはどう接するべきですか。

石田:忘れてはいけないのは、子どもが反抗するということは、親がうるさいことを言っているのですよ。反抗期の前は、“反抗する”という概念が子どもになかった。でも反抗できるようになったというのは、子どもが成長したということ。だから、お赤飯炊いて喜んでください(笑)。ここで力技で押さえつけようとすると、親子関係に傷が付きます。“そんなやり方じゃダメだよ”というメッセージだと思いましょう。口ごたえするなんていいじゃないですか。他人の言うなりにならないということでしょう。

沼田:親も子どもと一緒に変わらなければいけないですよね。

石田:悲しいかな、親は成長しません。だからこそ、どんどん成長する子どもに対してアプローチを変えてください。親の思い通りにやらせる、やらないからイライラするというケースがものすごく多い。子どものタイプを見極めてそれに合ったアプローチをするのが子育てだということを忘れないでください。自分の型に当てはめるのは子育てではないですよ。“この種は、どんな花が咲くのかな?”と楽しみにしてくださいね。

沼田:必ず花は咲きますからね。本日はありがとうございました。

 

▼プロフィール

石田 勝紀(いしだ かつのり)/一般社団法人教育デザインラボ 代表理事

都留文科大学国際教育学科元特任教授。20歳で起業し学習塾を創業。これまで5万人以上の生徒を指導。現在は1万人のママさんが参加したMama Caféを主宰するなど子育て・教育情報を発信している。『東洋経済オンライン』子育て連載は累計1.2億PVを超える。著書に「子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば」「小学生の勉強法」「中学生の勉強法2.0」など合計23冊出版。

 

石田勝紀公式サイト  http://www.ishida.online

Voicy(子育て・教育チャンネル)で毎日音声配信中 https://voicy.jp/channel/1270

 

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