いしど式の先生

2022/12/29

そろばんの効果は計算だけにあらず! 10段の先生三人が語る、そろばんを勧める本当の理由

そろばんが得意というと、一般的に「計算が早い」「算数や数学で苦労しない」とされています。しかしそろばんの上級者に言わせると、そろばんの効果はそれだけではないというのです。計算が得意なほかに、電話番号やIDをすぐに覚えられる、漢字や英単語を覚えるのに集中できるなど、その影響はさまざま。今回はそろばん10段を持ついしど式の先生3人に、そろばんをやっていて良かったと思うリアルなエピソードを伺いました。

 

計算が得意なのはもちろん、歴史の年号もすぐに覚えられた

 

質問:今日はいしど式でそろばんの先生として活躍している3人の先生がたをお招きして、そろばんが学生時代にどんな影響を与えたか、計算が得意で良かったことなどをお伺いします。先生がたは3人とも、幼稚園や小学生のときからそろばんを始め、さまざまなタイトルを獲得しながら10段の段位を持っています。
それではまず比嘉直人先生から、そろばんをやっていて良かったことを教えてください。

比嘉:小学生の算数から始まり、中学・高校生の数学では、計算において困るようなことは間違いなくありませんでした。特に算数に関しては、100マス計算では「無双」。必ずクラスで1番を取るので、タイマー係でした。計算だけでなく、数字に対する記憶力もとても良かったです。たとえば、両親や親戚、友人などの電話番号はすべて暗記していました。

大野:社内で使っているZoomのIDも記憶しているよね?

比嘉:IDが何パターンかあるのですが、メモを見ながら打ち込むのが面倒だなと思っていたら、いつの間にか覚えていました。

大野:新しいパソコンを使うとき、IDを入力しなければいけないのだけれど、比嘉くんに聞くととっても便利。

比嘉:数字の羅列で覚えるというよりは、トントントン…というようなリズムで覚えるのですよね。他の番号も、規則性を見つけて自然と覚えてしまいます。

質問:歴史の年号とかはどうでした?

濱田:私は結構得意なほうで、誰が何年に生まれて何年に亡くなったというのを覚えるのは大好きでした。保育園の頃から「織田信長は1534年に生まれて1582年に亡くなった」とブツブツ一人で唱えていたら、道ゆく人に変な目で見られたり(笑)。親鸞が90歳で亡くなったので、長生きだなあとか。

 

中学受験の面接で勉強エピソードと暗算を披露して合格

 

質問:他にそろばんをやっていて良かったことはありますか?

濱田:私もやはり、数字に得意意識を持てるようになったのが強みです。中学受験のときはそろばんのことをアピールしました。面接で「普段はどういう練習をしていますか?」と聞かれたのですが、「だいたい毎日1時間ぐらい集中して練習しています」と話して、実際にその場で3桁掛ける3桁の計算を披露したところ、「3秒ぐらいで答えられるなんてすごいね」と言われました。結果は見事に合格。進学校だったのでそのまま大学まで進み、今はそろばんの先生をやっているので、そろばんが人生に活きていると思います。

質問:じゃあ、今やってみましょう。156×703は?

濱田:109668です。

質問:即答ですね。

濱田:今の間も、「本当に合っているかな?」と2回計算しました。

質問:大野先生はどうでしょう?

大野:最も記憶に残っているのは受験のときですね。算数はもちろん、社会や理科など他の教科でも計算を使う場面がありますが、苦労した記憶は一切ありません。今でも覚えているのは、大学受験のときのセンター試験。センター試験はマークシート形式で穴埋めなので、計算する前からすでに桁数が絞られているのです。そういうときは全部のパターンを当てはめて、「この場合は小数点が出ずに割り切れるな。するとこの穴埋めに当てはまるから、いったんこの数字でやってみよう」みたいな力技で乗り越えられた場面もありました。圧倒的な計算力は身を助けてくれるなと実感しています。

インタビュアー:「さすが、千葉高校から、千葉大学のエリートですね」

 

何かを覚えるときに異次元で集中できる「ゾーン」に入る

 

質問:よく、「そろばんは集中力がつく」と言いますよね。皆さんの場合はどうでしたか? 学校の勉強も、人よりも少ない時間で済んだような経験はありましたか?

比嘉:数字とは別のものになりますが、漢字など短期的記憶に関しても苦労しなかったと思います。

濱田:私の場合は得意不得意が大きかったので一概には言えないのですが、漢字は得意だったかな。バスで通学していましたが、行きのバスで漢字を覚えて、学校でテストを受けたら高得点というのはよくありました。

大野:そろばんをやっていると、早い人だと掛け算九九を1分間に100回ぐらいできますよね。これって、漢字をひたすら書いて覚えるのと似ている。一瞬で「ゾーン」に入ることができるのだと思います。そろばんでひたすら掛け算を反復して覚えるという訓練をしておくと、漢字を覚えたり、英単語を覚えたりするときにすぐに「ゾーン」に入れる。するとすぐに頭にインプットできるのです。これはそろばんで培った力だなと思います。

質問:小学生のときに九九や漢字ドリルなどの宿題が多かったと思いますが、どうでしたか?

大野:授業中に終わらせる(笑)。「ここが宿題だよ」と言われた瞬間から、こっそりやっていた覚えがあります。なんというか、宿題を終わらせるためにかかる時間が読めるのですよね。たとえば、「この漢字ドリルだったら3分ぐらいで終わる。次の休み時間にやっておけば、家でやらなくてもいいじゃん」とか。家に帰ってから後でやる必要はないなと思っていました。

比嘉:私は計算ドリルに関しては、「筆算をきちんとやりなさい」というのだけがハードルでした。筆算をする前に、答えが頭の中で出ていますから。ただ学校のルールとしては、筆算を確実に書いて繰上げの数字などの仕組みを理解しなさいという決まりだった。それが少し辛かったですね。ただ、学校の宿題に関してはそれほど時間をかけずにできたと思います。

濱田:私は宿題に関しては家に帰ってからやるタイプでした。小学校1年生のとき、漢字ドリルをノートに1ページ書くと、先生からシールを一枚もらえるというルールがあったのですが、ページ数を先生が書いてくれるのですね。私はこういうのを競い合うのが大好きで、かなり力を入れて勉強していました。クラスで2位だった子は確か1年で200ページぐらいやっていたけれど、1位だった自分は550ページぐらいのぶっちぎり。でも、まったく苦にならなかったですね。

比嘉:それはやっぱり、そろばんで培った集中力ですよね。

大野:普通だったら飽きるでしょう。そろばんは、単に計算を早くできる、数字に強くなるという以外にいろんな効果があると思います。勉強も楽しく取り組めるので、学校に行くのが楽しくなると思いますよ。

 

▼プロフィール

 

(左)

大野哲弥(おおのてつや)27歳/石戸珠算学園

主な取得段位:全国珠算連盟 暗算段位、総合段位 各10段

主な成績:
Mental Calculation World Cup 2022 Addition Champion/ Most Versatile Calculator
クリスマスカップ2021 英語読上算競技 高校・一般の部 日本一
クリスマスカップ2019 読上算 高校・一般の部 日本一
小学校1年生からそろばんを始め、現在22年目。千葉県千葉市出身。

 

(中央)

比嘉直人(ひがなおと)25歳/石戸珠算学園

主な取得段位:
全国珠算連盟 暗算段位、総合段位 各10段
全国珠算教育連盟 暗算段位 珠算段位 各10段

主な成績:
全日本通信珠算選手権大会沖縄県大会 高校一般の部 優勝
全九州珠算選手権大会 読上算競技 第2位

6歳からそろばんを始め、約10年続けたものの高校受験を理由にそろばんから離れる。しかし大学生のときに復帰。自分で考えて練習する楽しさに気づき、「子どもたちにもこの感覚を知ってほしい」とそろばんの先生を志す。沖縄県北中城村出身。

 

(右)

濵田隼冴(はまだはやき)28歳/石戸珠算学園

主な取得段位:
全国珠算教育連盟 暗算10段
全国珠算連盟 暗算段位、総合段位 各9段

主な成績:
全日本通信珠算選手権大会福井県大会 高校一般の部 優勝

年長からそろばんを始める。部活動を優先するために中学生のときにそろばんを辞めるが、高校生で復帰。大学時代は、立命館大学珠算部の主将として活動。「好きなことを仕事にしたい。自分が大好きなそろばんの良さをもっと広めたい」と、そろばんの先生になる。大阪府池田市出身。

 

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