教育・子育て

2022/10/28

幼児教育のエキスパートが語る ~ 伸びる子の条件と、子どもに親ができること

いしど式の加盟校であり、幼児教育から大学受験予備校まで展開する興学社学園グループ。今回は創立者の池田晃社長をお招きし、学園の理念や民間教育の担い手として目指していること、現代の子どもを取り巻く環境について伺いました。数千人の子どもたちを教えてきたエキスパートが語る、“伸びる子”の条件と、親が手伝えることとは何か。株式会社イシド代表取締役の沼田紀代美がインタビューしました。

 

『教育は麻薬なり』恩師の言葉通り、教育に夢中になる

沼田:本日はいしど式の加盟校である興学社様の池田晃社長をお迎えして、子どもの教育について深くお伺いしたいと思います。幼児教育のエキスパートとして、教育問題について論じていただければと存じます。

池田:よろしくお願いいたします。

沼田:まずは事業概要からお伺いいたします。どのような事業を展開されていらっしゃるのでしょうか。

池田:興学社は1983年設立、来年で40周年を迎えます。40年前、私が30歳のときに教育事業を始めようと大学の恩師に伺ったところ、『気をつけたほうがいい、教育は麻薬だ』と言われました。その意味は、『教育は面白くて面白くて仕方がないから、やめられないのだ』というもの。最初は驚きましたね。

沼田:素直に受け入れられたのですか。

池田:最初は懐疑的でした。中学生の英語を教えることから始めたのですが、当初は自分が飽きてしまうのではと思ったのです。ところが数か月続けてみて、私はこの教育という仕事にすっかりとハマってしまいました。優秀な子から苦手な子までさまざまいるわけですが、一人ひとりに合った教え方を考えるのは本当に難しい。だからこそ夢中になってしまったのですね。

沼田:“教育は麻薬なり”は御社のモットーです。

池田:同時に恩師に言われたのは、『教育ほど尊いものはない。教育は人がすべてだ』ということ。仕事を始めてみてわかったのですが、子どもたちは我々教育者の影響をものすごく受けます。ときには子どもの人生を左右するほど。たとえば、教育者の言葉で理系だった子が文系に変わることもあります。志望校も教育者の言う通りに決める子もいますよ。

沼田:子どもたちの素直さには驚くことがよくあります。

池田:当時、リサーチのために周りの塾を調べたのですが、優秀な塾は理念が明確だということがわかりました。それから、研修を一生懸命にやっています。『なるほど、ここまでやるのか』と驚いた私は、長年かけて「興学思想」という理念をまとめた冊子を作り上げました。スタッフはこれをすべて暗記します。きちんと覚えているか、試験も行います。

沼田:徹底していますね。

池田:子どもたちは我々に期待をしているのですから、応えるのは当然です。

 

真剣な教室の雰囲気に惹かれ ~ いしど式の加盟校に

池田:小学校教育、幼児教育と事業を拡げていくきっかけとなったのは、中学生を教えていると小学校で学ぶ基礎が抜け落ちている子どもがかなりの数いるからです。そうして小学生を教えていくうちに、いや、幼児教育も手がけたいという思いが強くなりました。また、英会話が絶対に必要になる時代が来ると思いましたので、英会話スクールを始めました。小学生で英検2級、中学生で英検1級を持っている生徒は珍しくありません。

沼田:子どもたちの能力はものすごいものがあります。

池田:幼児教育を手がけるなかで、数学が苦手な子をなんとかせねばと思っていたのですが、まさかそれが、そろばんとは思っていなかったですね。そろばんについてはスタッフから『社長、ぜひそろばん教室を始めたいです』という声が挙がったので導入したのですが、本当にそろばん教室を始めて良かったと思っています。というのも、私の中学校時代は、クラスでトップ5に入る子どもは、ほぼそろばん教室に行っていたからです。

沼田:なぜいしど式を選んでくださったのですか。

池田:本部が千葉にあるので見に行こうとなり、見学をさせていただいたところ、教室の雰囲気がものすごく真剣なことに驚いたのです。生徒はもちろん、先生たちも一生懸命。正直なところ、FCというのは本部の姿勢に疑問を感じることも多いのですが、これだけきちんと生徒に向き合っているならば安心だなと思ったのです。また、大会などのイベントがものすごく盛り上がりますね。これは子どもにとってはとてもいい環境だと思いました。

沼田:ありがとうございます。

池田:そろばん教室を始めてから着々と生徒数を伸ばし、現在では1,000人の子どもが教室に通うまでになりました。

沼田:興学社大学には私たちの先生も通わせていただいて、一緒に研修をさせていただいていますので、ファンはとても多いです。「興学思想」はどのようにしてできたのですか?

池田:最初は研修を1回あたり4時間ぐらいやっていたのですが、そのうちにスタッフから『内容をまとめてほしい』という声が出たのですね。そしてまとめたときに、どうせなら暗記してもらおうと思ったのです。暗記してもらったうえで、年に1回は試験をやります。80点以下は追試、60点以下は解職勧告までします。しかしスタッフもよく勉強してくれて、平均点は98点、ほとんどが満点ですね。

 

苦を抜き楽を与える ~ 子どもたちを想う気持ちが大事

沼田:一番大事な基本理念は何ですか?

池田:『全ては生徒の為に』『全ての生徒の為に』です。いろんな生徒を見ていると、極端に頭のいい子から成績が下の子まで、さまざまいることがわかります。発達障害の子もたくさんいます。我々は発達障害の子どものための教室もやっていますが、大変だけれども子どもは本当にかわいい。すべての子どもには可能性がありますから、すべての子どものために奉仕したいと思っています。

沼田:池田社長の教育に対する思いには、本当に頭が下がります。

池田:私が大切にしているのは、“抜苦与楽(ばっくよらく)”の精神。仏教の言葉で、苦を抜き楽を与えるという意味です。いじめや不登校など、子どもたちにもたくさんの“苦”があります。それを抜いてあげようというのがモットーです。

沼田:まさに奉仕ですね。

池田:その代わり、得られるものも大きいですよ。卒業生は“恩師”として結婚式に招いてくれるとよく聞きます。

沼田:それは素敵ですね。私自身も教育に携わっていて、あまりの責任の重さに現場の仕事を離れたことがあります。しかし、教育の仕事から得られる喜びがあまりに大きいので、戻ってきてしまいました。まさに麻薬だなと思いますね。

池田:私は70歳ですが、あと10年はこの仕事をやりたいと思っています。生まれ変わっても教育者になりたいですね。経営者になりたいとは思いませんが(笑)。

 

“この子を何とかして救いたい” 民間教育だからこそできることとは

沼田:御社は、不登校の生徒のために高卒資格が得られる興学社高等学院を展開されています。どのような思いがあったのですか。

池田:不登校の生徒の割合は5%程度と言われています。不登校の生徒には『学校に1か月行かなかったらなかなか復帰は難しい、学校に行くべきだ』と話すのですが、どうしても学校に行けない子が出てきます。その子を一人でも救ってあげたいという思いで、興学社高等学院を創設しました。

沼田:クラスに1人か2人には不登校の生徒がいる計算ですよね。公教育にできなくて、民間教育にできることはなんでしょうか。

池田:“子どもに対してなんとかしてあげたい”と思う先生の存在です。そういう気持ちは、子どもは敏感に察知します。私も昔「スパルタ先生」と言われて厳しい対応をしていましたが、一度もクレームが来たことはありません。子どもを思いやる気持ちが伝わっていたからでしょう。『生徒の人生の応援団たれ』というのも、我々のモットーです。

沼田:厳しくできるというのは、そのお子さんに対して責任感を持っているから厳しくできるということですよね。中途半端な気持ちではできませんね。

池田:若い先生からよく『叱り方を教えてほしい』と言われますが、叱ってコントロールするのは講師を始めて数年先のこと。今やらなければならないのは信頼関係を作ることだよと教えています。信頼関係ができていないのに叱ったって子どもは逃げていくだけですよ。

沼田:私自身も、若い先生から『子どもを叱れない』という悩みを聞くことが多いです。親御さんからも同じ悩みを聞きますね。親としてどのようなことを心がけていくべきでしょうか。

池田:勉強をしていない親御さんが多いですね。親御さんが勉強しないのに子どもが勉強するわけがない。子どもと一緒に勉強している親御さんの背中を、子どもはよく見ています。

 

40年の指導実績でわかった “伸びる子” の条件は素直であること

沼田:約40年間さまざまなお子さんを見てきて、伸びる子とそうでない子の違いは何だと思われますか。

池田:最も大事なのは、素直な性格であるということです。我々の仕事は、生徒の成績を上げて志望校に合格させるという単純なものですが、教育者の言うことを『わかった、やってみる』と素直に言う子どもは本当に伸びます。また、目標があるかというのも大事です。目標がないのに勉強するわけがないですね。また、塾が大好きな子も伸びます。優秀な子は塾が大好きです。

沼田:やる気がある子は目つきでわかりますよね。

池田:昨年、成績不振者のオンライン個人面談を数百人やりましたが、彼ら全員に共通しているのは“ながら族”であること。テレビやゲームは面白すぎますから、やりながら勉強しても成績が伸びるわけがありません。部活も、やるならば勉強と両立させなければなりませんね。これらは、親御さんの協力が必須です。

沼田:池田社長が提唱している、子ども、教育者、保護者の力が合わさった『協育』の理念ですね。この考え方は、実はいしど式の理念とよく似通っているのです。ある意味教育の本質かもしれませんね。

池田:「education」の「educe」は、引き出すという意味だそうです。子どもの力を引き出すのが教育ということですよね。動機づけがとても大事なのです。それでいくと、やる気を引き出すのが苦手な親御さんはとても多いです。

沼田:褒めることはとても大事。自分のことを認めてくれない大人に、子どもは心を開きません。

池田:本気で勉強すれば、ゲームより楽しいという生徒もいます。それを伝えられたらと思います。

沼田:社長の今後の展望は何ですか?

池田:我々は15の事業を手がけていますが、これを20ぐらいに増やしたいですね。料理教室にも興味があります。また、スタッフの待遇改善も手がけていきたい。これは創業者の務めだと思っています。学園の生徒と同じぐらい、スタッフがかわいい。実は興学社のスタッフのうち、三分の二ぐらいは興学社の学校の卒業生なのです。

沼田:そうなのですか。いしど式も卒業生の先生が多いですよ。

池田:彼らに存分に力を発揮してもらい、教育業界全体の底上げをしていきたいなと思っています。

沼田:応援しています。本日はありがとうございました。

 

株式会社 興学社(興学社学園) 代表取締役社長/学園長 池田 晃

1983年に東京都府中市にて生徒数36名で学習塾「プリンス進学院」を開校。以来、草創期よりの理念である『興学思想』の実践をもって生涯教育機関として拡大・発展を遂げ、学習塾・予備校の他に英会話スクール、PCスクール、日本語学校、技能連携校、放課後等デイサービスなど、15部門の教育事業を展開している。創立40周年を目前に控える現在、生徒数15,000名、スタッフ数1,100名を数える。池田晃学園長は、興学社学園の創立者、経営者にして教育者。社外においても、社会貢献のために各地域において教育支援活動を行っている。

 

 

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