教育・子育て

2022/09/08

全国学力テストから分かる現代の子どもに必要な教育

全国の小学6年生と中学3年生を対象に行われる「全国学力テスト」。全国学力テストからは日本全国での教育水準や学力などの比較ができます。また近年世界の子どもを対象としている学力テストの結果から、日本の子どもたちの学力が低下していることが分かりました。この記事では、全国学力テストの概要や近年の全国学力テストの結果から見る、現在の子どもに必要な教育について解説します。これから全国学力テストを受験する方や保護者の方は、ぜひ参考にしてください。

全国学力テストとは

全国学力テストとは、文部科学省が実施する学力調査です。実施日は毎年4月、対象は全国の小学6年生と中学3年生全員となっています。「ゆとり教育」を実施してから小・中学性の学力水準が低下し批判が出たため、かつての国による学力調査を再開させる形で2007年より実施されています。

全国学力テストは、毎年国語、算数・数学の2科目、さらに3年に1度理科(2012年追加)と英語(中学生のみ、2019年追加)を追加した4教科で実施します。全国学力テストは全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握するために行うため、テストの結果が成績に反映されることはありません。なお、2016年度より全国学力テストを高校入試に利用することは禁止されています。

実施する目的

全国学力テストは、全国的な児童生徒の学力が学習状況をテスト結果から把握、分析し様々な学力向上のための調査に活用されています。
・義務教育である全国の小学校と中学校で、教育の質や機会は均等であるかを分析する
・学校での児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善
・教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立
・地域や学校全体の学力状況を把握する
・児童生徒の学力と学習・生活環境の関連を分析する
・全国の学力データの分析と比較

全国学力テストの結果から授業や指導の内容、家庭での子どもの学習状況を客観的に検証するために行われます。そのため、全国学力テストは子どもの学力そのものを問うのではなく、学校、教育委員会、親など子どもの周辺の存在や学習環のあり方を問うために行われています。

さらに全国学力テストで集まった全国のデータを分析することで、自治体間での成績や結果が比較できます。成績が上位の自治体や学校の教育方法をほかの自治体や学校が参考にする、保護者や児童が中学校を選択する判断基準とするなどでも活用されています。

今年度の参加数は?

文部科学省発表の「令和4年度全国学力・学習状況調査の参加教育委員会数・参加学校数等について」による、令和4年4月8日時点の参加校数および参加者数は次の通りです。

参加校数…国立155校、公立2万8,242校、私立466校の計2万8,863校(後日実施の小学校5校、中学校26校を含む)
参加者数…小学6年生が約105万1,000人、中学3年生が約103万4,000人

2022年度のテストに「プログラミング」が初登場

令和4年度の全国学力テストでは、小学6年生の算数にて「プログラミング」を題材とした問題が初めて登場しました。小学校では2020年度より、中学校では2021年度よりプログラミング教育が必修化されています。

プログラミング教育を実施する目的は、プログラミングのスキルを身に着けるだけでなく、小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力などを育成することです。一方、プログラミング教育についての具体的な学年や授業内容に関する明確な内容は決められていません。それぞれの学校である程度までは自由に実施されています。

プログラミング教育を実施するにあたり、教師のプログラミング指導への不安、ひとり1台タブレットの配布など多くの課題があります。これらの不安や課題を解消するために、文科省・総務省・経産省、学校関係者、自治体関係者、教育・IT関連・ベンチャー企業などが連携した組織「未来の学びコンソーシアム」が設立されました。実際のプログラミングの授業の事例、指導案の紹介などが行われています。

世界的に高まるSTEM教育の重要性

プログラミングが必修化し、テストとして習熟度を把握するようになり、注目を集めるようになったのが、STEM教育です。。今後情報化社会やグローバル社会はますます拡大していきます。STEM教育ではプログラミングを代表する理系的な素養を通じ、高い科学技術力や考える力を得てIT・グローバル化社会で活躍できる人材を育てることが期待されています。

STEM教育はアメリカ発祥ですが、すでにヨーロッパやインド、シンガポールなどの技術立国で国を挙げてSTEM教育への取り組みが行われています。日本でもプログラミングの必修化をはじめ、一部の教育機関ではSTEM教育への積極的な取り組みが徐々に増加しています。

 

日本は何位?世界の学力ランキング

OECD(経済協力開発機構)では、3年に1度国際的な学習到達度調査(PISA)を実施しています。学習到達度調査では、世界の15歳の生徒を対象に、読解力、数学知識、科学知識、問題解決を調査します。

学習到達度調査の結果から分かる最新の「世界学力ランキング」(2018年分)では、日本の順位は数学6位・読解力15位・科学5位でした。前回の2015年の世界学力ランキングの日本の順位である数学5位、読解力8位、科学2位と比較すると、2018年では数学、読解力、科学全てが下がっています。

2018年の日本の読解力の平均点は504点で、前回の2015年の調査より12点低いです。さらに過去の記録を調べてみると、2012年調査より34点低い結果となりました。この結果からは、日本人の読解力が年々低下傾向にあることが分かります。

日本人の読解力低下の背景

読解力とは「文章の詳細な読み取りをする力」とイメージする人も多いでしょう。学習到達度調査では、読解力とは「自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発展させ、社会に参加するために、テキストを理解し、利用し、評価し、熟考し、取り組む力」と定義しています。

日本の読解力が低下した理由は、読書習慣が減少したからと言われています。ただし原因はそれだけではありません。パソコンやインターネットを使った勉強方法に不慣れなことなど、日本の現在の教育体制が社会の変化やグローバル化に追いつけていないことや、子どもの幼い頃からの家庭・地域環境でのコミュニケーション不足など、根本的な部分にも読解力低下の要因がある可能性があります。

 

全国学力テストから見える上位3県の共通点とは

2021年度の全国学力テストの都道府県別のランキングは、例年上位県である石川、秋田、福井が小学校・中学校ともにトップ3となっています。上位3県には、記述式の設問に強い点、他県と比べて無回答率が低い点などが共通しています。

上位県の学習や教育への取り組みを見てみると、石川と秋田では3つの共通点があることがわかっています。
・学習指導要領で重視している「対話的な学び」の授業を多く取り入れている
・家庭学習への指導がていねいに行われている
・教職員のチームワークが強く、かつ質が高い

対話的な学びを重視した授業とは、正解をただ求めるのではなく自ら考え、話し合いを通じて試行錯誤を繰り返しながら解決につなげる授業です。解決のために試行錯誤をする授業の機会が多いことは、無回答率の低さにもつながっています。

ほかにも、家庭学習への指導やサポートが丁寧、教職員同士のチームワークが強いことが、教育の質を向上させることにつながっていると言えるでしょう。

 

子どもの為にできる今後の対策

日本の子どもたちは読解力が低下している傾向にあることが分かりました。学力向上のためにも、日常生活からいろいろな方法を実践してみましょう。
・音読をする
・知らない言葉が出てきたらこまめに辞書を引く
・文章の要点を短くまとめる「要約」のトレーニングをする
・読書をするときには大切なところに線を引くかメモを取る
・新聞・雑誌・コミックなどをよく読む
・テーマを決めた対話やディスカッションの機会を持つ
・博物館で学芸員から話を聞く

読書や話を聞くなどでインプットをし、対話やメモによってアウトプットをすることで、読解力を鍛えられるでしょう。

※この情報は2022年6月時点のものです。

TOPページに戻る ≫